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お金を動かし、社会を動かす2~日本を見つめ直しながら~

 前回の「お金を動かし、社会を動かす」でご紹介した吉田様のインタビュー、多くの人に投資に関心を持ってほしいという部分をご紹介しました。ここでは、今ある常識にとらわれないでいてほしいというメッセージを中心に掲載します。

2-1.投資や経済の流れは外国から入ってきたものなのか?
 よくニュースなどで聞く投資や経済に関するものには外来語が数多く含まれています。例えば近年、投資家の投資判断や上場企業の経営目標の指標にROE自己資本利益率)がよく使われています。これは分かりやすい指標で国民を引っ張っていく、特にアメリカのような多民族国家の方法として世界に広まっていった指標のようです。サスティナブル、ESG投資と外来語が混ざっています。また経営学といえばMBAを学びます。
しかし、吉田様は「日本の経営学者はMBAの本場のアメリカのことばかり注目するが、アメリカ建国以前から創業している日本の企業が、なぜ長く続いてきたのかをしらべている研究者がいないのは残念だ」とおっしゃいます。
投資のようなお金の流れは古来より日本にもあり、日本の企業は外国の企業に比べて寿命が長いと言われるそうです。日本の歴史にも何か、サスティナブル=持続可能な投資のヒントになるようなことがあるようです。

-2.日本を見つめなおす
 日本の企業は外国の企業に比べて寿命が長いと言われます。それは他の国や違う民族に征服され王朝が変わるようなことがなかった国で、必然的に事業や組織も残りやすく、寿命が長いことが挙げられます。そのため、アメリカ建国以前からの企業も多いそうです。
現存する世界最古の企業は日本にあります。法隆寺を建築した企業で、聖徳太子の時代から大工の集まりとしてはじまった「金剛組」で、創業は578年です。2005年に、経営危機に陥りましたが、高松建設株式会社の出資を受け、「金剛組」として、今も100人以上の宮大工を抱えているそうです。
株式のように、出資者に対して何かを還元する流れは、奈良時代からありました。僧侶が技術者だった時代、村の整備を次に示すようなお金の流れで進めていたようです。遣隋使や遣唐使として派遣された僧侶は、様々な土木技術を覚え日本に持ち帰った人もいました。村を収めている豪族へ事業の説明をしてお金を出してもらい、民には食料を支給する代わりに工事に関わってもらうことで治水整備を進めていきました。すると災害に強い村ができ、出資者である豪族は収穫量の増加という形でリターンを得ることになります。
 東大寺の大仏建造の時も同じような仕組みで、この時は精神的な安定が出資者へのリターンとなりました。その時代、死後の世界はどうなるのかが、公家や貴族の間では一番の心配事でした。そのため、大仏の事業に貢献すれば極楽浄土に行けるということを信じ出資したそうです。
 近江商人の思想として「三方よし」は知られています。これは「売り手よし、買い手よし、世間よし」のことをさし、売り手の都合だけで商いをするのではなく、買い手が心の底から満足し、さらに商いを通じて地域社会の発展や福利の増進に貢献しなければならないという意味です。長い歴史を持つ日本の体制で、このような「三方よし」は新しい流れであります。歴史を読み解くと日本はひどい商売をしている商人が多かったと、井原西鶴の「日本永代蔵」にも書いてあります。例えば、米屋では1号の升を仕入れるときは大きめの升、売るときは小さめの升にして商売をしていたところがあったそうです。井原西鶴は日本にはずるい商売をする企業が多かったため、中国の商人を見習えとまでいったそうです。そのような時代のなか、「三方よし」は例外中の例外であって、「三方よし」をきちんと守るような、優良な企業がその後まで残ったのかもしれません。そのため「三方よし」が広まったかもしれませんが、そこまで深く研究した人がいないから定かではないようです。
 幕末に来た外国人のなかには、自分の国とはまったく違う形で発展をとげた日本の姿に驚いた人が多いそうです。日米修好通商条約を締結したタウンゼント・ハリスは、「これが恐らく人民の本当の幸福の姿というものだろう。私は時として、日本を開国して外国の影響を受けさせることが、果たしてこの人々の普遍的な幸福を増進する所以であるかどうか、疑わしくなる。私は質素と正直の黄金時代を、いずれの国におけるよりも多く日本において見出す。」と書いています。渡辺京二さんがこうした幕末に来日した外国人の日記をまとめた「逝きし世の面影」を出版していることを吉田様は教えてくれました。

奥深い、奥深い話が聞けたと日本文化のことを聞いたときは思いました。

最後に、吉田様が全体を通して伝えていただいたことを、自分なりにまとめてみました。
2-3.今ある常識にとらわれない
 銀行預金の金利が上がらないのは、不景気だからと私は思っていましたが、吉田様に世の中の仕組みが変わった可能性もあると興味深いことまで教えていただきました。今までの前提としては、物価が上昇するから、お金を預けるならその上昇率に対して金利が付くのが当たり前でした。しかし今、物価はもう変わらない、それどころか下がっています。例えば50年前は、100円で買えていたものが翌年110円を出さないといけない時代だった。しかし今発売された家電製品は翌年値段が上がっていることはなかなかない中、そもそも物価が上がる時代はこの先あるのでしょうか。物価が変わらない以上は金利が付かないはずです。しかし、国が発行しているものが影響していて100万円預けてくれたら2%付くようでそれが現在の利子につながっているそうです。お金をため込んでいくとお金が回らない、物価も上がらないしお金は流れていかないと吉田様から聞き、お金は人々の間で回るものだったということを私は思い出しました。
 日本はデフレだからダメ、「失われた20年」など聞きますが、果たしてそうなのでしょうか。すごく貧しくなっているわけではないし、様々なことが便利になっているので、物価が上がらず金利が上がらないのは悪いこととは一概には言えないと吉田様は気づかせてくれました。経済的に成長しなくても、スマホができ、ポケベルを使っていた時代に比べ確実に便利になっています。日本の経済は大きくならないけれど、何とかうまくいっているのは実は最先端のことかもしれないので、なんで上手くできたのかを調べ世界の見本となるようになればいいのかもしれないと吉田様はおっしゃりました。
 吉田様は、投資家としての見聞を深めるために、MBAをとられたそうです。しかし、その時からなにか変だと思っていたようです。みんな外国ばかりにとらわれてしまって、自分たちの国、日本について調べないでいます。日本という国を調べることが、ここ数年の吉田様の課題となっているようです。日本はどういう国なのかを学びなおして、上記のような歴史を見つけたそうです。奈良時代に資本主義に似た形があったり、老舗の企業が多かったり、また更に何かが見つかりそうです。
「日本の歴史を振り返り、日本民族が得意とすることを認識することで、それとつながる事業は、つまり長期的に生き残る日本企業と分かり、それを長期投資に使えるのではないか。」と、吉田様はおっしゃいました。まだまだ、日本研究を続けていかれるようです。
 
2回に分けてお伝えした、「お金を動かし、社会を動かす」吉田様のインタビュー。まず大きいことは考えず、「自分の事」として身の回りのやれることからやっていく、そんなことを思うお話が聞けました。また個々人が、せめて自分自身がいいと思う方向に、お金を回そうと意思を持ち、お金がどんどん流れていけば日本社会はさらに動いていくということを教えてくださいました。
 つたないインタビューアーだったのに快く引き受けていただき、吉田様に感謝しています。読者の皆様、最後まで読んでいただきありがとうございました。
「常識にとらわれない」ことが伝われば幸いです。

吉田喜貴(よしだよしたか)様プロフィール
ITバブルがピークに達した2000年春から株式投資をはじめて大失敗。その後、簿記・財務諸表を学び、個別企業への長期投資を信条とする。また投資好きが興じて大学院に籍を置いていた時期に、アメリカ偏重の経営学に違和感を持ったことで、日本の歴史・文化の探究を続けている。
2005年~ブログ「投資を楽しむ♪」(http://pixy10.org/)で情報発信を続けている。
2014年~日本サステナブル投資フォーラム(http://www.jsif.jp.net/)の事務局長を担当。
投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2016(http://www.fundoftheyear.jp/2016/)にも携わる。